
1. はじめに:なぜ議事録が必要なのか
1.1 議事録の役割
1.1.1 情報共有
議事録は、会議で話し合われた内容や決定事項を、参加した人だけでなく、やむを得ず会議を欠席した人や後から関わる人にも正確に伝えるための大切な資料です。
例えば、会議の参加者が全員同じ内容を記憶しているとは限りませんし、会議後に「何が決まったのか分からない」といった混乱が起きることもあります。議事録があれば、誰でも会議の内容を後から確認できるため、情報の伝達ミスや誤解を防ぐことができます。
1.1.2 記録・証拠
会議では、さまざまな意見が出たり、重要な決定がなされたりします。しかし、口頭だけのやり取りだと「言った・言わない」や「どうやってその結論になったのか」が分からなくなってしまうことも珍しくありません。
議事録は、会議の流れや決定事項、発言の経緯を記録として残すことで、後から振り返ったり、トラブルが起きたときの証拠資料として活用できます。特に、社外との打ち合わせや契約に関わる会議では、議事録の有無が大きな意味を持つこともあります。
1.1.3 責任範囲の明確化
会議では「誰が」「いつまでに」「何をするのか」といった具体的なタスクや担当が決まることが多いです。議事録にこれらを明確に記載しておくことで、各自の役割や責任範囲がはっきりし、業務の抜け漏れや行き違いを防ぐことができます。
例えば、「資料作成はAさんが5月10日までに担当する」と記載されていれば、Aさんも周囲も進捗を把握しやすくなります。
1.1.4 ポイント
議事録は単なる「後処理」や「事務作業」ではありません。むしろ、ビジネスコミュニケーションの中心的な役割を担っています。
あなたが正確で分かりやすい議事録を作成することで、チーム全体の認識が揃い、仕事がスムーズに進むようになります。
初めて議事録を担当する場合は不安もあるかもしれませんが、まずは「会議の内容を正確に伝える」ことを意識して取り組んでみましょう。
2. 議事録の基本構成
議事録には、必ず押さえておきたい基本的な構成があります。これを守ることで、誰が読んでも分かりやすく、必要な情報がきちんと伝わる議事録になります。
社内で既に議事録のテンプレートやフォーマットが決まっている場合は、それに従うのが基本ですが、ここでは一般的な項目を詳しく説明します。
2.1 会議名・日時・場所
会議のタイトルや実施日、開始・終了時刻、開催場所(オンラインの場合はツール名も)を必ず記載します。
例:「営業戦略会議 2025年3月10日 10:00-11:00 オンライン(Zoom)」
これにより、どの会議の議事録なのかが一目で分かり、後から探すときにも便利です。
2.2 参加者(欠席者)
会議に出席した人と、欠席した人を分けて記載します。
例:「参加者:営業部 A、総務部 B/欠席者:開発部 C」
誰が出席していたかを明確にすることで、発言や決定事項の責任の所在も分かりやすくなります。
2.3 議題(アジェンダ)
会議で話し合うテーマやトピックを箇条書きで示します。
例:「1. 新商品プロジェクトの進捗確認 2. 次回展示会の出展計画」
事前にアジェンダを共有しておくと、参加者も準備しやすくなりますし、議事録でも会議の流れが分かりやすくなります。
2.4 議事内容(討議内容・経緯)
各議題ごとに、話し合われた内容や意見、議論の経緯をまとめます。
「誰がどんな意見を出したか」「どんな議論があったか」など、流れやポイントが分かるように記載しましょう。
2.5 決定事項
会議で最終的に決まったことを明確に書きます。
例:「次回展示会には新商品Aを出展することに決定」
決定事項がはっきりしていないと、後から「結局どうなったの?」と混乱が生じるので、必ず明記しましょう。
2.6 アクションアイテム(担当・期限)
誰が、いつまでに、何をするのかを具体的に記載します。
例:「資料作成:Aさん(5月10日まで)」
これが抜けていると、せっかく決まったことも実行されずに終わってしまうことがあります。
2.7 次回の予定
次回会議の日程や、経過報告が必要な日程などを記載します。
例:「次回会議:5月15日(水)10時~」
事前に予定が分かっていれば、参加者も調整しやすくなります。
2.8 その他特記事項
上記以外で、特に伝えておきたい連絡事項や注意点などがあれば記載します。
例:「会議資料は共有フォルダに保存済み」「次回は新メンバーも参加予定」など。
3. 議事録作成のステップ
議事録は「会議が終わってから書き始める」ものと思われがちですが、実は会議前の準備から始まっています。
ここでは、会議前・会議中・会議後の各ステップごとに、具体的な手順やコツを解説します。
3.1 会議前の準備
3.1.1 アジェンダ(議題)の確認
会議の前に、必ず「今回の会議では何が話し合われるのか」を確認しましょう。
アジェンダが事前に配られている場合は、内容をよく読んでおきます。
もしアジェンダがない場合は、主催者や上司に「今回の会議の目的や議題は何ですか?」と確認しておくと安心です。
3.1.2 過去の議事録や資料の確認
特に継続的なプロジェクトや定例会議の場合は、前回までの議事録や関連資料に目を通しておきましょう。
「前回どんな話し合いがあったのか」「今回の会議はその続きなのか」など、会議の流れを理解しておくことで、内容をスムーズに把握できます。
3.1.3 テンプレートや書式の用意
社内で決まった議事録フォーマットやテンプレートがある場合は、事前にパソコンやノートに用意しておきましょう。
テンプレートを使うことで、記載漏れや書き忘れを防げますし、会議中も安心してメモが取れます。
3.1.4 ワンポイント
会議資料が事前に配られている場合は、重要そうな部分に付箋やマーカーで印をつけておくと、会議中に「ここは議事録に書いておこう」とすぐに分かります。
また、議題ごとにノートやメモのスペースをあらかじめ分けておくのもおすすめです。
3.2 会議中のメモの取り方
3.2.1 議題ごとに区切ってメモを取る
会議は通常、いくつかの議題(トピック)に分かれて進行します。
そのため、メモも「議題1」「議題2」…と区切って取ると、後で整理しやすくなります。
例えば、「議題1:新商品プロジェクト」→「Aさん:進捗報告」「Bさん:課題提起」など、発言内容を分けて書きましょう。
3.2.2 重要なキーワード・数字を逃さない
会議では「いつまで」「どれくらいの予算」「何人で対応するか」など、具体的な数字やキーワードがよく出てきます。
これらは後から見返すときに非常に重要なので、必ず正確に記録しましょう。
分からなければ、その場で「すみません、今の期限をもう一度教えてください」と確認しても大丈夫です。
3.2.3 決定事項が出たら印をつける
会議中に「これで決まりですね」「この方針で進めましょう」といった合意があった場合は、メモに★や◎などの印をつけておきましょう。
後で議事録をまとめるときに、決定事項を見落としにくくなります。
3.2.4 わからないところは都度確認
会議中に聞き慣れない専門用語や、意味が曖昧な発言があった場合は、遠慮せずに「今の意味をもう少し詳しく教えていただけますか?」と質問しましょう。
曖昧なままメモしてしまうと、後で議事録を見た人が混乱する原因になります。
3.2.5 ワンポイント
「誰が発言したか」を一言一句記録するよりも、「どんな内容が話されたか」「どんな意見が出たか」を簡潔にまとめることが大切です。
必要に応じて「Aさん」「Bさん」などイニシャルでメモしておき、後から整理しましょう。
また、会議中は全てを完璧に書こうとせず、重要なポイントや決定事項を優先してメモするのがコツです。
3.3 会議後のまとめ方
3.3.1 メモを元に議事録を作成
会議が終わったら、できるだけ早く(理想は当日中)にメモを整理し、テンプレートに沿って議事録を作成します。
会議直後は内容や雰囲気をよく覚えているので、記憶が新しいうちにまとめるのがポイントです。
時間が経つと細かいニュアンスを忘れてしまうことがあるので、なるべく早めに取りかかりましょう。
3.3.2 決定事項やアクションアイテムを明確化
特に「誰が何をするのか(担当者)」「いつまでにやるのか(期限)」は、漏れなく記載しましょう。
これが抜けていると、せっかく会議で決まったことも実行されずに終わってしまうことがあります。
3.3.3 内容を読み返し、わかりにくい表現を修正
会議に参加していない人が読んでも分かるように、専門用語には補足説明を加えたり、分かりやすい言葉に言い換えたりしましょう。
例えば、「KPI」などの略語は「重要業績評価指標(KPI)」のように補足を入れると親切です。
3.3.4 ワンポイント
会議が終わったばかりのうちにまとめると、発言内容や雰囲気を覚えているので誤記が減ります。
また、議事録作成に慣れるまでは、メモと記憶を頼りにしながら、分からないところは先輩や上司に確認しましょう。
3.4 内容の確認と共有
3.4.1 上司や先輩にドラフトを見せる
作成した議事録は、まず上司や先輩にドラフト(下書き)を見せて、誤字脱字や内容の抜け漏れがないかチェックしてもらいましょう。
特に重要な会議や社外向けの議事録は、複数人で確認することが大切です。
3.4.2 参加者全員に送付・確認依頼
議事録は会議の参加者全員に共有し、「自分の発言内容と違う」「表記ミスがある」などの修正要望があれば反映しましょう。
このプロセスを経ることで、より正確な議事録になります。
3.4.3 最終版の確定と保存
修正点を取り込んだら、正式版として保存します。
誰でもいつでも参照できる場所(社内システムや共有フォルダなど)に保存し、必要な人がすぐに見られるようにしましょう。
3.4.4 ワンポイント
議事録を送付する際のメールやチャットには、「ご確認をお願いします。〇月〇日までに修正・補足があればお知らせください」と期限を設けておくと、スムーズにフィードバックが集まります。
また、修正依頼が来た場合は、速やかに反映しましょう。
4. 議事録作成のコツと注意点
4.1 簡潔で分かりやすい表現を使う
議事録は、長い文章でダラダラと書くよりも、箇条書きでポイントを整理してまとめるのがおすすめです。
例えば、「Aさん:新商品の納期を5月末に設定する案を提案」など、必要な情報を簡潔に伝えることを意識しましょう。
4.2 事実と意見・検討事項を区別する
「決まったこと(事実)」と「検討中のこと(意見や提案)」を明確に分けて書くと、読み手が混乱しません。
例えば、「決定事項:次回展示会に新商品Aを出展する」「検討事項:販促資料の作成方法については次回までに案を持ち寄る」など、区別して記載しましょう。
4.3 担当者と期限は必ずセットで記載
「誰が何をするか(担当者)」と「いつまでにするのか(期限)」を必ずセットで書きましょう。
これが曖昧だと、実行漏れや責任の所在が不明確になりがちです。
4.4 会議中の確認を怠らない
メモを取りながら「今の認識で合っていますか?」とその場で確認する習慣をつけると、後での訂正やトラブルが減ります。
分からないことは遠慮せずに質問しましょう。
4.5 スピード重視
議事録は、細かい部分にこだわりすぎて提出が遅れるよりも、要点を押さえて早めに共有し、フィードバックをもらう方が有効です。
最初から完璧を目指さず、「まずはドラフトを早く作る」ことを心がけましょう。
5. 議事録チェックリスト
議事録を作成したら、以下のチェックリストを使って内容を確認しましょう。
セルフチェックを習慣にすることで、ミスや抜け漏れを防げます。
- 会議名・日時・場所が正しく記載されているか
- 参加者(欠席者も含む)の名前が正しいか
- 議題に沿って議事内容が整理されているか
- 決定事項が明確に書かれているか
- アクションアイテム(担当・期限)の漏れがないか
- 専門用語や略語が必要以上に多くないか(補足説明があるか)
- 誤字脱字や表現ミスはないか
- 読み返して内容がわかりにくくないか
5.1 チェックのタイミング
議事録を作成した直後に一度セルフチェックし、先輩や上司に見てもらう前に修正しておくと、よりスムーズに進みます。
また、最終版を保存する前にも、もう一度見直す習慣をつけましょう。
6. よくある質問(FAQ)
6.1 どこまで詳しく書けばいい?
初めて議事録を書くと「どこまで細かく書くべきか?」と迷うことが多いです。
基本的には、発言者の細かい言葉尻まで書く必要はありません。
大切なのは「会議の流れ」「決定事項とその理由」「アクションアイテム(担当・期限)」の3点が読み手に伝わることです。
必要に応じてポイントを要約し、箇条書きや見出しを使って整理しましょう。
6.2 メモを取るのが追いつかない場合は?
会議のスピードが速いと、メモが追いつかないこともあります。
そんなときは、あらかじめ「議題ごとにスペースを分けておく」「結論や担当者などのキーワードを逃さない」ことを意識しましょう。
慣れないうちは、会議を録音して後から聞き直したり、先輩にサポートしてもらうのも良い方法です。
6.3 文体は敬体と常体のどちらが良い?
議事録の文体(「です・ます調」か「である調」か)は、社内ルールや先輩の例に合わせて統一することが大切です。
どちらでも構いませんが、読み手が混乱しないよう、一定の文体を維持しましょう。
6.4 アクションアイテムが多い場合の管理方法は?
会議で決まったアクションアイテムが多い場合は、議事録とは別にタスク管理表やプロジェクト管理ツールを活用するのが効果的です。
議事録には概要のみ記載し、詳細な進捗管理は専用ツールで行う方法もあります。
7. おわりに
議事録作成は「地味な作業」と思われがちですが、実際には情報共有・責任範囲の明確化・業務効率向上など、組織にとって非常に重要な役割を担っています。
新社会人のうちは、会議の内容を理解するのも大変かもしれませんが、議事録を作る過程で業務の流れや専門用語に早く慣れることができます。
最初は不安や戸惑いもあると思いますが、このマニュアルとチェックリストを活用しながら、まずは「早く」「正確に」「必要な情報がまとまった」議事録を作ることを目指してみてください。
分からないことや不安な点があれば、遠慮せず先輩や上司に相談し、アドバイスをもらいながらスキルアップしていきましょう。
議事録作成を通じて、ビジネスコミュニケーション力や業務理解力も自然と身につきます。
あなたの作成した議事録が、チームや会社の仕事を円滑に進める大きな力になることを、ぜひ実感してください。